T’sGarden2026とBelieve

岡村孝子

先日、山口県スターピアくだまつでの公演をもって、孝子さんにとって復帰後最長となる計6公演の、ソロデビュー40周年記念T’s Gardenツアーが終幕しました。

昨年の40周年記念クリピクが渾身の超豪華セットリストだったので、T’s Gardenはもう少し普段着の粧いなのかなと思いきや、何といっても第一部最後にあの特別な「Believe」をもってきてくれて、十二分にうれしいサプライズに満ちたセットリストでした。

「夢をあきらめないで」と「Believe」という孝子さんの二つの代表曲。

ソロアーティストとしての孝子さんの誰もが認める代表曲は「夢をあきらめないで」ですが、その次の位置を占めるのが「Believe」であることは衆目の一致するところだと思います。しかし、この二つの代表曲は、その後の展開の中で、ある意味できわめて対照的な位置を占めるようになったようにも思えます。

「夢をあきらめないで」は、リリース以来、コンサートのたびに歌われ続け、狭い意味でのファンを超えた多くの人に愛され、リスナーの様々な思いを吸収して、名実ともに岡村孝子というアーティストを代表する楽曲の地位に昇りつめました。この曲はいつしか、「ただの失恋ソング」から「応援歌」へと意味合いの変化を遂げていきます。

これに対して、「Believe」は確かに、孝子さんの第二の代表曲ともいうべき知名度を誇りつつも、ある時期以降なかば封印される形で、めったにコンサートで歌われることはありませんでした。

映像作品で見ても、「夢をあきらめないで」はアンコールIからアンコールXまですべての作品で歌われ収録されているのに対し、「Believe」はアンコールIIとIIIのみ、そしてそれ以降1度も映像作品には収録されていません(そしてなぜかしばらく前まで配信では聴くことはできず、オフィシャルのYouTubeでは今も見ることができません。これはもちろん、いろいろな事情があってのことだと思いますが)。

こうして二つの代表曲は孝子さんの音楽の長い歴史の中である意味で対照的な意味あいをもつように至ります。

「夢をあきらめないで」はコンサートで歌われるごとにファンの思いを吸い込み、当初の孝子さんの思いから独り立ちして進化し続けていったのに対し、「Believe」はめったに歌われることなく、それゆえに、作られた当時の孝子さんの思いを瞬間凍結して純度100%のまま、ずっと守り続けている。

もちろんこれはどちらがよいという話では全くありません。どちらも甲乙つけがたい珠玉の名曲たちのいわば性格の違いのようなものです。

孝子さんにとって「あまりにも特別な存在」だからこそ、めったに歌われることのない楽曲だからこそ、特別なアニバーサリーイヤーの第一部ラストのこの瞬間に「Believe」は歌われる必然だった。今から振り返るとこのように思えます。

しかし、私自身ずっと「Believe」を生で聴きたい、今度こそは歌ってくれるはずと思いながら幾年月、でもなぜか現実に居合わせたときには、今回歌ってくれるとは全然予想していませんでした。それほどに「Believe」という曲は孝子さんにとって特別な存在だからこそ、ライブでは聴けないものだと半ば無意識のうちに思い込んでいたのかもしれません。

もしかしたら会場の皆さんも半ば同じような感覚をいただいていたのではないでしょうか。だからこそ、孝子さんの口から「Believe」という単語が発せられたときに、特別な奇跡に居合わせたような興奮に包まれたのだと思います。

孝子さんがずっと大事に守り続けてきた「Believe」を今こうしてライブで聴くことのできる幸せ。そして、孝子さんの歌う「Believe」はあの頃と寸分違わない魂で、美しく、気高く、力強いたたずまいのまま私たちの心に響き渡ったのでした。この曲の中には確かにあの頃の孝子さんが生きている。いや今の孝子さんはあの頃の孝子さんと寸分変わらない意志を持って生きている。そう感じられたのでした。

「Believe」以外にも本当に素敵な素晴らしい楽曲に包まれた今回のT’s Gardenコンサート。またもや孝子さんから生きる力をたくさんいただきました。次のクリピクまでこの余韻を糧に、私自身しっかりと悔いのないように歩き続けていきたいと思います。孝子さん、本当にありがとうございました。

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